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(05/Feb/2018)

これはまずいのでは?

 電車の中吊り広告で「花粉を水に変えるマスク」なるものがありました。光触媒かなにかでしょうが、この宣伝文句は誇大広告ではないでしょうか。花粉を分解して水や二酸化炭素に変えるまで何ヵ月かかることやら。クレベリン並の怪しさじゃありませんか。え、宣伝文句じゃなく商品名だから大丈夫ってことあるの?

 発売元はDR.C医薬。私は浅学にして知りません。使っているのはハイドロ銀チタンなるもので、光ではなく水や酸素と反応する「ハイブリッド触媒」だそうで…。水と反応してイオン化したら浮いちゃうと思うんですが、どうなのでしょう。それに人肌とも反応するから取り扱い注意の危険物ですよねえ。ん、公式サイトに希にヒリヒリすることがあると書かれてますね。なるほど。これは注視してみましょう。

 技術的なことは特許出願と論文を見れば見当がつきます。まずは特許ですが、光触媒の化粧品は3件ありますが、どれも未請求というか絶対に拒絶されるレベルの出願ですね。そして本件に関しての出願していないようです。おやおや。では論文は…1件ありました。著者はDR.C医薬社長の岡崎成実氏です。表題は「アレルギー性鼻炎及び花粉症に対するハイドロ銀チタンシート(HATS)の臨床的有用性の検討」。http://jssm.umin.jp/report/no34-1/34-1-06.pdfそれなりに書かれていますが、ツッコミ所が多数あります。原理説明において銀粉が電極になるという意味不明な表記や、反応に光が必要である表記や、価数の合わない化学式が出てきます。光は要らないんじゃないのかよ。

 そして臨床試験ですが、被験者は普通のマスクで2日間、普通の鼻栓で5日間、この触媒(HAT)を使った鼻栓で5日間過ごします。各期間における鼻水やくしゃみの量を点数として、期間内の平均値を評価しています。点数が高いほど症状が悪いことになります。んー、初めの普通のマスクだけ2日間って何ですかね。そして何故期間内の平均値を使う? 通常のマスクでも効果があるからじゃないかい?

 さて、結果ですが、

普通マスク鼻栓HAT鼻栓
くしゃみ2.25点2.33点1.42点(初日の値)
鼻水3.08点3.05点2.17点(初日の値)
鼻閉3.08点3.05点2.00点(初日の値)
 おーおー、滅茶苦茶です。普通マスクは2日間の平均、鼻栓は5日間の平均、HAT鼻栓は双方の初日だけという直接比較できないものを並べているのです。これはデータ操作しているんですね。別の絵でHAT鼻栓の5日分の点数が徐々に下がっていく様が示されているんです。これでHATに効果アリとしているのですが、どうせ期間内平均だけを示している普通マスクと普通鼻栓でも日々点数が下がっているのでしょう。普通に考えて、普通マスクは二日目に激減し、鼻栓でちょっと上がって5日間かけて下がっていく。間髪を入れずHAT鼻栓を使えば、そりゃあHATに何の効果がなくても更に下がりますよ。それがばれるのは困るのでHAT以外は期間平均したと。

 嘘をついているとは限らない、ではなく論文の場合は「こういうことをするのはは嘘だから」で終わりです。本来なら鼻栓同士で全く同じ実験をやって比較しなければいけません。今回の被験者は12人。6人ずつに分けて普通鼻栓とHAT鼻栓で比較するべきです。人数が少ないということであれば、間を十分に開けて2種類を試さなければいけません。それも、どちらも同じものであると信じさせる必要があります。この場合は両期間の天候差の影響が大きくなるので信用できるデータと言えるか怪しいものです。今回もまさにそう。

 ま、アウトですな。更に追い討ちをかけましょう。過去、東京医師会から指定医資格の3ヶ月停止処分を受けています。産婦人科(花粉と関係ない!)でルール違反の中絶を行っていたそうです。なるほどねえ。何やら逮捕歴とか物騒な話まで出てくるんですが…。おいおい。

 ちなみに、Dr,C医薬は2件の実用新案登録を有しています。履きやすい靴下(実登3211355)と履きやすいストッキング(実登3211225)…。


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